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在日朝鮮人について考える授業をおこなった。在日朝鮮人のＮ・Ｐさんの作文を配り読み聞かせた。話のあらすじはこうである。Ｐ・Ｎさんは高校２年生。これまで自分が朝鮮人であることをクラスメイトには話していない。美子（ミジャ）さんという転入生が来て、彼女は朝鮮人であることを堂々
と名のった。今まで自分の名前を隠していたＰ・Ｎさんは、本当のことを話すかどうか悩む。話を読み聞かせたあとで
< 言わない方がいい > ３人→５人
< 言った方がいい > ３１人→２９人
他にもたくさんの子が、朝鮮人であると告白しても、今までとかわらないし、言ってすっきりした方がよいとの意見を発表した。ここで一つの発言を取り上げて、
子どもたちの予想は、< 変わることはない > が圧倒的多数であった。
< 変わることはない > ３２名
< 変わるかもしれない > ２名
在日朝鮮人が置かれている日本での立場について考えさせたかった。子どもたちは扱いが変わると聞き「えっ？」と驚いていた。どんなことが違う
のか、想像をしてみた。
・ひそひそ話 ・人が離れていく
・会社で厳しくされる ・友達ができない
・名前を呼んでもらえない ・無視される
・誘ってもらえない ・（日本人より）下に見られる
・いじわるをされる ・見る目が違う
教師からも、在日朝鮮人の受けている差別について話をした。次のような問題が実際に起こっているである。
就 職：大企業の中には戸籍を出させることを義務づけることで、外国人籍の人の就職を断るところがある。
公務員：上級公務員の採用をすることはなく、教員になることもできない
選挙権：在日朝鮮人には選挙権がない。しかし税金は日本人と同じだけ払っている。
学 校：朝鮮人学校は各種学校という扱いで、こうと学校卒業資格にならない。高校野球でも夏の全国大会（甲子園）への参加資格がない。
指紋押捺：指紋の押捺が義務づけられている。外国人登録証を持たなくてはならない。
Ｐ・Ｎさんがこのあとどうしたのか続きの文を読み聞かせた。Ｐ・Ｎさんは自分が朝鮮人であることを告白したのである。様々な差別があることに子どもたちは驚いていた。在日朝鮮人についてたくさんの疑問を持ったようである。
・悪いことをするとは決まっていないのに、なぜ指紋を採るのか。
・在日朝鮮人の人はたくさんいるのかな？
・なぜ日本人は朝鮮に住んでいないのか？
・日本人と朝鮮人は場所も近いし顔も似ているのに、なぜ差別をされるのか？
・一番朝鮮人が多い県はどこか？
・これほどまでして差別する必要があるのか？
・もし日本人が朝鮮で生まれ育っていると、在日朝鮮人みたいに、会社
や選挙のことで差別されるのか。
・日本にずっと住むと言ったけれど、日本に朝鮮人の墓は建てられるのか？
◆資料１◆
「私は朝鮮人 Ｎ・Ｐ」
私ば、父が朝鮮人で母が日本人です。私は日本籍で母の籍ですが、私は朝鮮人です。小・中学生の時は、まわりはほとんど私のことを知っていたから、自分が朝鮮人だということを隠す必要がありませんでしだ。しかし、高校に行くと、私が朝鮮人だと知られだら、仲間はずれにされるのではないか？いじめられるのではないか？という気持で、高校での二年間は、自分が朝鮮人だということを、友だちに隠して生活してきましだ。
一年生のとき、友だちが韓国・朝鮮のことについて社会科で調べていた時、私は、のどから手がでるくらい、ここはこうだよっと話してあげたかった……。でもここで話すと朝鮮人だということがぱれてしまう。キャンプに行くときも、保倹証のコピーをもってきなさいといわれだとき、父の名が朴勇一（パクヨンイル）となっているので、これもぱれてしまうと思い、みんなより遅れて出しだこともあります。そういったように、高校での生活は、今までぱれないか？ぱれないか？とびくびくしながらおくってきましだ。しかし、その私を変えだのば、あの新入生の美子（ミジャ）さ
んでした。
入学式のとき、その子は本名を名のりました。初めはよく聞きとれなくて、”うそだあ−”と、知らないふりをしていましだ。しかし、美子さんは「新入生の言葉」で、「ヨロブン・アンニョンハシムニ力（みなさん、こんにちは）」と朝鮮語でどうどうとあいさつをしました。美子さんが、今まで差別されてきたことや、毎日のようにぞうきんや消しゴム、うわぱきがとんできたこととか、みんなにいいたくないようなことを話しているのを見て、”あんな話するなよお−”とか、”勝手にしてよお−”という気持ちと、”あっ、でも自分が朝鮮人だと隠しているのがなさけない”という気持ちがしました。でも、”今ごろ私がみんなに話したところでどうなることでもない。あと一年だまっていれぱ卒業だあ−”と、そのことをごまかしていました。
次の日、リーダー会という会議で、どうやって一年生を引っぱっていくか？と、初めはその議題にそって話していましたが、突然、副校長先生が、「咋日、朝鮮人の美子さんが入学してきたが、みんなはその子の事をどう思っていますか？」と、議題を変えてしまったのです。私は、”まじかよお−” ”そんな話にかえるなよお−”という気持ちでそこから逃げ出したいくらいでした。友だちは私の顔色が青ざめているのを見て、「具合わるいんじやないの？」「保健室に行ったほうがいいんじやないの？」といいました。私は休憩に入るとすぐに友だちの所へ行き、初めて本当の事をうちあけました。友達は、私の口からいうまでもなく私のことを知っていたけど、私の口から出るのをまっていだといいましだ。みんなに話したいというと、「Ｐ・Ｎの心に少しでもイヤダッという気持ちがあるのならやめた方がいいよ」と、いってくれましだ。
だけど、朝鮮人だということを今までかくしてびくびくしてたけど、あとの一年は本当の自分をみんなに知ってもらって、どうどうと卒業したいと思うから、みんなの前で話す決心をしました。
「私の母は日本人で、父は朝鮮人です。私は母の籍で日本国籍ですが、私が朝鮮人にはかわりがありません。父が朝鮮人だからといって憎んだりしたことはなく、朝鮮人の父を誇りに思っています。これからは、美子さんを助けるまでいきませんが、一緒にがんぱっていきたいと思います」と、話していると、涙が出てきて声もぷるえていました。話し終ったあと、知らない人から肩をただかれて、「がんぱってね！」とか、「私もあなたと同じなの、母は日本人で父は中国人だけどね。お互いにがんばりましょう」といわれたときは、すごくうれしくてたまりませんでしだ。
でも、明日みんなにどんな顔をしてあえぱいいのだろう？と不安もありました。そうしたら先生に、「今日はよく自分のことをみんなの前で話してくれたね。でも、話したからといって自分がかわるのではなく、今までのＰ・Ｎでいたらいいんだと思うよ」といわれた時、そうだ、今まで通りのままでいいんだと思い、少し安心しました。次の日、今まで通り学枝に行くと、みんなも今まで通りのままでした。その時、みんなに本当の事を話してよかったと思いました。でも、これからがいろいろと大変だと思います。だけど、自分なりにがんぱっていきたいと思います。
◆資料２◆
「名前」
隠してると友だちになれない。同じく夫妻の話。
自分の本名を使うことに対して、私だち日本人はぷだん別に何も気にしない。けれども、パク・ナミの文章にもあったように、在日韓国・朝鮮人の多くにとっては、それは日本のなかでの生き方を決めかねない重要な問題だ。
夫：オレは小学校六年までば朴（ボク）で通してました。ところが中学生 になると、物心というか、色気というか、そういうもののせいで、それができなくなっていったわけ。やっぱり隠したくなるんだ。子どものころは九州にいたんだけど、まわりに朝鮮人がいなかっだんだ。○さん！なんかいわれたらアッあのひと朝鮮人だ、ともうまわりの見る目が違うのね、はっきりいって。
妻：ここは韓国人、朝鮮人が多いからね、病院なんかへいって朴さんて呼 ぱれても、そんなに抵抗感はない。
夫：オレ、田含で免許証もらいにいったとき「○さん、○さん」て呼 ぱれて黙ってたことがある。でもね、２０歳ぐらいになると、本名を隠してるのがやっぱり嫌になってくる。どこがどう嫌なのかっつうのは、うまく説明できないんだけどね。
妻：ほら、子どもが幼稚園に通い出すと、お母さん同士知り合いになるでしょう。するとねえ、やっぱりここらあたりでも、ヒソヒソと「あのひと朝鮮人よぉ」なんていってるのね。だけどあたしは最初っからはっきりいってるの、うちのダンナば朝鮮人だって。それで離れていく人ば、追っかけないことにしてる。隠して仲よくなったって、あとで ほら、分かったら……。
夫：そうだよね。隠してると本当の友だちになれないしね。