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「韓国の教科書の中の日本と日本人」（一光社）という本がある。韓国では子どもたちに歴史をどう教えているのかがわかる興味深い本である。日本の教科書ではわずか数行で済ませている歴史的事実について、詳細な背景や解釈がされていて、韓国の歴史というよりはむしろ日本史を読んでいるような錯覚さえ起きる。４年生の国語で扱う「偉大な人々」を取り上げ授業を試みた。まず、プリントを配り、
・②：怒ったり笑ったりしている人がいる。旗を持っている。
・③：いやそうな顔をしている
・②：みんな旗を持っている
・④：日本語みたいのが書いてある。独立運動に少し似ている。
・②：みんな右手で旗を持っている。左手をグーにしている。
・①：何でこんな像があるのかな。
・②：みんなパジャマみたいな格好をして走っている。
・②：みんな手をあげて一つの方向に走っている。
・同じ形の言葉（万歳）が、何度も出てくる。
たくさんのことに気づくことができた。気づいたことを出し合っているうちに、独立運動の頃のことではないか？という話になった。でもこれが朝鮮の独立前か独立後なのかがはっきりしなかった。そこで時期がいつなのかを考えた。
< 解放されたぞ。やった >
・絵の中で万歳をしているから。
< 解放してくれ >
・悲しそうな顔をしている
・④の絵の中に、日本語で「商会」とあるから、まだ日本に支配されている。
・日本人を追い出すぞ、って感じがする。
予想を訊ねると < 解放してくれ > という子が多かった。「プリントの裏を見ると、何と書いてあるのか日本語で書いてあります。先生が読んでみますね」と読み聞かせた。概略は次の通りである。
・三・一独立運動で、柳寛順（ユ クァン スン）という１６才の少女が、多くの人に呼びかけたこと。独立万歳と旗を振ったこと
・日本の警察は独立運動を銃撃などで、止めさせようとした。
・ユ クァン スンは、日本の警察に捕まり、拷問を受けて死んだこと。
さて、三・一独立運動について少し知ったところで、日本と韓国の違いについて考えた。
・日本が殺したり悪いことをしたから。
・教科書の中に人を殺したなどを入れたくない。
・自分の国を愛した人を殺したから。
・いいことならいいんだけれど、教科書に載せると、日本が悪いことを認めたことになる。
・こういうのが教科書に載ると、読んだ人が落ち込んでしまう。残酷すぎて出せない。
・自由民権運動のおじさんと似ている。ユクァンスンさんが髭のおじさんで、自由を訴えているみたい。
・ノルマントン号事件と同じで、韓国が不利だったことが書いてある。日本の場合はノルマントン号事件で、日本が不利だったことを教えている。
今度は逆に、なぜ韓国ではこのような歴史を教えているかを考えせた。
・昔、偉い人がいたんだよ、と教えている。
・みんなもユ クァン スンさんを見習いなさい
・勇気を持ってほしいと思っている。
・国を守った人がいることを教えている。
・日本の独立運動（自由民権運動）と似ている。朝鮮の人にぜひ知ってほしい。
日本と韓国の微妙な立場の違いを感じ取ることができた。特に自国の歴史
と、朝鮮の歴史を比較したことには正直驚いた。ノルマントン号事件など
は、日本が被害者の立場に立って歴史を教えている。また、三・一独立運
動と自由民権運動の共通性についても気づくことができた。
◆資料◆
１ 偉大な人々
(1) 柳寛順（ユ クァン スン）
三月の空
私はいま
三月の青い空を仰ぎ見ながら
柳寛順姉さんをしのんでいます。
独立万歳を叫び続け、
牢獄の中で息を引き取りつつ
切なく思いこがれていた、あの空を
今てもあの青い空を仰ぎ見れば、
あの日の叫びが
今にも聞こえて来るようです。
－－万歳（マンセー）！万歳（マンセー）
－－大韓独立万歳！
わが民族は、１９１０年、不幸にも日本に国を奪われ、みずからの国、みずからの土地でありながら安心して暮らすことがてきなかった。多くの人びとが牢獄につながれたり，遠い外国へ逃げたりしなければならなかった。しかし、１年、２年とたつにつれ、日本を追い出して国を取り戻さねばならない、という思いが募っていった。
＜日本をこの土地から追い出さねばならない。国を取り戻さねばならい＞－－だれもがこのような思いで一杯になったのである。このようにして、ついにすぺての同胞（はらから）が力を合せ、いっせいに立ち上がった。
１９１９年３月１日、ソウルで爆発した独立を求める叫びは、またたく間に三千里の国土津々浦々に広がり、１カ月が過ぎてもやむ気配を見せなかった。その間、日本の警察と憲兵は、銃剣で多くの同胞を殺し、刑務所へ閉じ込めた。しかし、わが民族は少しもひるまず、大韓独立を叫び続けた。
３・１運動の炎が燃え上がったその日、１６歳の女学生であった柳寛順もまた、独立万歳を叫ぶ隊列に加わった。故郷で芽生え始めた国を愛する心は、梨花学堂へ入学してからさらに高まっていた。そんな彼女は、不幸な民族のために何かをしなければならないと、常に考えていたのである。
３・１運動が起こった翌日、学校は閉鎖された。寄宿舎の学生たちは、ばらばらに散って行くしかなかった。柳寛順も家へ帰らねばならなかった。故郷に帰った彼女は、ここでも独立万歳を叫ばねばならないと決意した。
まず最初に従姉が同志になってくれた。彼女は従姉とともに同志を集める一方、独立万歳を叫ぶ計画を着々と進めた。うら若い少女とは思えないほど素晴らしい知恵と勇気、そして疲れを知らない情熱で仕事に取りくんだ。
いよいよ独立を叫ぶことに決めた日が目の前に近づいて来た。その前夜、柳寛順はたいまつを持って山の峰に登った。たいまつに火をつけて高らかに掲げると、他のあちらこちらの峰からもたいまつの炎が上がった。国を愛するという大志が込められたたいまつが、夜空に燃え上がった。それは、明日の決起を誓い合うためにしめし合わせた、たいまつの炎だったのだ。
夜が明けた。その日はちょうど並川（アウネ））に市が立つ日だった。朝から集まりだした群衆は、普段の何倍にもなるようだった。彼らは、品物を売り買いに来た人たちだけではなかった。ほとんどが、独立万歳を叫
びに来た人たちだったのである。
柳寛順と彼女の同志たちは、それまでに作っておいた太極旗のたばを運んで人びとに分け与えた。人びとは受け取った太極旗を服の下に隠し、あたかも品物を売り買いする人のようにふるまった。
正午になった。そのとき柳寛順は、米屋に積んである米俵の上に立った。「みなさん、四千年の輝ける歴史を持ったわが民族が、倭奴（ウェノム）のやからに踏みにじられています。われわれは、不幸にも彼らに国を奪われたのです。いまや、私たちはこの国を取り戻さねばなりません。いま全国津々浦々で、すべての人が立ち上がり独立を叫んでいます。みなさん、国を奪い返さねばなりません。万歳を叫びましょう。大韓独立万歳を！」
柳寛順の叫びを聞いて、人びとの目が輝き始めた。全員が服の下に隠しもっていた太極旗を取り出して高く掲げた。
「万歳！万歳！」「大韓独立方歳！」
万歳の声が並川の空と大地を震わせた。太極旗の波が並川の町にあふれた。驚いた日本の警官がすっ飛んて来た。銃と剣で、前進する隊列をはばもうとした。しかし、太極旗の隊列はとどまらず、同胞の威声はいつまても響き渡った。
まもなく駆けつけた日本の憲兵と合流した警察は、めったやたらに銃を撃ち、剣を振り回した。多くの人びとが殺され、負傷した。群衆はちりぢりになり、日本の警察と憲兵は、主謀者を捕えようと村じゅうを捜した。しばらくの間身を隠していた柳寛順は、家に戻った。日本の警祭と憲兵が家を取り囲んでいた。
「あの娘をつかまえろ！あの娘が柳寛順だ。主謀者だ！」柳寛順は憲兵に連行された。彼らは、言い尽くせぬほどありとあらゆる拷問を加えた。
「だれに言われたんだ？」
「主謀者は私です。自分の国を愛し、独立万歳を叫んでなにが悪いんですか！あなたたちに私を訊問する資格はありまぜん。私は正々堂々とした大韓の娘なのです。」
憲兵隊でありとあらゆる拷問を受けた柳寛順は、公州（コンジュ）とソウルで裁判を受けた。彼女は少しもひるまず、屈せず、堂々と主張した。７年の実刑を受けた彼女は刑務所へ入れられた。しかし、独立を渇望してやまぬ彼女の志は、だれも屈服させることはできなかった。幼い身でむごい拷問を受け、衰弱しきっていた柳寛順は、最後まであらがったあげく、１９２０年、１７歳の花のような若さでこの世を去った。凶暴きわまりない日本は、柳寛順を無惨に殺しはしたが、彼女の国を愛する心までは殺せなかったのである。
その後、独立運動はますます盛んになり、国内はもちろんのこと、国外にいる人びとまでが、ともにカを合わせた。いまわれわれが国を取り返し、日に月に発展しているのは、このように団結したカがあったおかげなのである。われわれは３・１運動の精神とともに、国を奪い返すために貴い生命を捧げた大韓の娘、柳寛順を忘れることはできない。