シリウス/ 国語 / 社会 / 算数 / 理科 / 生活 / 音楽 / 図工 / 体育 / 道徳 / 学活 / 特活 / 総合

季節としぜん（夏）２

アリジゴクはひきょう者か？

森竹高裕

　昆虫採集に出かけて、子どもたちが一番興味を持ったのはアリジゴクであった。名前はよく知っていても、どんな虫でどんなところにいるのかはほとんど知らない。巣穴にアリを落として獲物にしていることを教えると「そんなの卑怯だ！」という声があがった。そこで、こんなアリジゴクの生き方について考えてみることにした。

　まずは「サイエンスチャンネル」というインターネットの番組で、巣の掘り方・アリが落ちてきたら砂を撒いて足を滑らせて穴の下まで落とすこと・体液を吸ったあとはポイッと投げ捨てること・ダンゴムシも餌食にすることなどを知った。こうしたアリジゴクの狩りの仕方を知ったところで

こんなアリジゴクのことをどう思いますか？

　・セコい　　・ズルい　　・悪いヤツ

という印象を持ったようだ。そこで

砂を撒いて虫を巣に落とすアリジゴクは卑怯者だろうか？

卑怯だと考えた子たちがいたので、考えを聞いてみた。
〈アリジゴクはひきょう者〉５人

• 砂で虫を落として、自分は獲物の体液を吸うだけだから。
• 砂を撒いて虫を巣に落として食べるなら、昆虫を追いかけて捕まえて
• 食べればいい。砂を撒いて虫を巣に落とすなんて卑怯。
• 他の虫を食べてしまうから。

　そこで友達と自由に意見交換をした。気がついたことや考えが深まったことについては付せん紙にメモをしていった。こうした意見交換のあと、全員でアリジゴクの生き方について話しあってみた。

〈アリジゴクはひきょう者ではない〉

• アリジゴクは虫を食べないと生きられないから。アリやダンゴムシもかわいそうだけれど、アリジゴクも生きたいから卑怯ではない。
• アリジゴクは餌（虫）を捕まえないといけない。人間と同じで食べ物がないと困ってしまうから。
• アリジゴクはこの方法じゃないと虫の液を吸えないから。「じゃあ、虫の液を吸わなければいいじゃん」と言われても、それじゃあアリジゴクがかわいそう。
• 砂を撒くのも巣を作るのも、自分でやっていて誰の手も借りていないから卑怯ではない。
• 生き物は何か食べないと死んでしまうし、生き物によっていろいろなやり方があるから。
• 虫を食べないとアリジゴクは死んでしまうから、それはしょうがないと思う。
• アリジゴクは作戦を立てていたから卑怯ではない。アリジゴクの作戦勝ち。

　このような考えが出され、学級全体としては〈ひきょう者ではない〉のではないかということになった。

　このあと［ＮＨＫデジタル教材］でもう少しくわしくアリジゴクについて理解を深めた。アリジゴクはウスバカゲロウの幼虫だったのである。
・餌は一週間に一度くらいしか食べられない。
・２年ほどで成虫になるが、餌が取れないと４年ほどかかる。
・成虫になったあとの命は短い。
　こうしてみるとアリジゴク（ウスバカゲロウ）は、アリジゴクで必死になって生きているのがわかる。

授業の感想を書きましょう。

• 最初はアリジゴクは卑怯者だと思っていたけれど、アリジゴクの工夫や頭で考えたことなので、これはアリジゴクの作戦勝ちだと思いました。なのでアリジゴクは卑怯者ではないと思います。アリジゴク（ウスバカゲロウ）はとても頭がいいと思います。
• アリジゴクは前に話で聞いていただけなので、本当はいないと思っていました。でもアリジゴクを勉強して本当にあるんだなぁとわかりました。
• ウスバカゲロウは大人になって少ししか生きられなくてかわいそうです。自分でアリジゴクを作ってすごいと思いました。ウスバカゲロウは必死で生きていると思います。
• アリジゴクはすごく頭がよくて工夫して餌を食べているなぁと思いました。でもぼくは人間に生まれてよかったです。
• 生きるためには卑怯もクソもない。アリジゴクだってがんばって巣を作ってまでこのやり方にしたのだから、卑怯というのはかわいそうだと思う。人間より短い人生なのによくがんばっているなと思いました。
• 　子どもたちの感想を読んでいると、昆虫の学習だけというよりも「生き方」といった哲学的なものを感じた。

．指導案