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雨ニマケ

雨ニモマケズと正反対だけれど…　　

森竹高裕

　宮沢賢治の代表作に「雨ニモマケズ」という詩がある。これと正反対の「雨ニマケ」（剣崎克彦）という詩があるので、これを取り上げた。
　まずは「雨ニモマケズ」を読み聞かせた。「聞いたことがある！」という子もいた。次に「雨ニマケ」を「雨ニモマケズ」と対比しながら一行ずつ見せていった。
「雨ニマケ」は「雨ニモマケズ」の正反対で、パロディのようになっている。一行見せるたびに笑いが起きた。

　一番最後の行は、すぐに見せずに子どもたちに予想させた。

剣崎さんは「ソウイウ　ジブンヲ」どうしたいのでしょう？

　・カエテイキタイ　　・ヨクシタイ　　・コロシテヤリタイ

　正解は「コロシテヤリタイ」であることを教えた。ずいぶん衝撃的な終わり方である。

　次に「雨ニモマケズ」と比べてみた。

宮沢さんは「サウイウモノ」になっているでしょうか？　それとも剣崎さんのような「ソウイウ　ジブン」に近いのでしょうか？

〈サウイフモノ　になっている〉４人
　・宮沢さんが「雨ニモマケズ」のようにがんばっているから。
　・宮沢さんは農業のことをがんばっているから。

〈なっていない〉２５人
　・ナリタイと願っているみたいだから、なっていないと思う。
　・ナリタイと書いてあるから、まだなっていない。

　多くの子が、宮沢さんもまだ「サウイフモノ」には、なっていないのではないかと考えた。ここではどちらかに結論づけることはしなかった。

剣崎さんは「コロシテヤリタイ」と述べています。「コロス」を別の言葉に置きかえてみましょう。

　・ナクシタイ　　　　・ナオシタイ　　　　・説教シタイ
　・倒シテヤリタイ　　・消シタイ　　　　　・自分ヲ変エテイキタイ
　・捨テタイ　　　　　・押サエタイ

　たくさんの言葉が出された。そこで「コロス」についてもう少し考えた。

剣崎さんは、どんなこと（心）をコロシタイ、と思っているのでしょうか？

　・自分に負けないこと　　・自分がもっと強くなる。
　・いらだっている心　　　・人生にカリカリしている
　・全部に負けない　　　　・自分の弱い心

　このような考えが出されたところで、剣崎さんのこの詩に対する思いを紹介した。
・「コロス」といういわば「衝撃的」な言葉の落ちは、もっと自分を高み　にのぼらせたいという思いがあったからです。
・「負け」を「マケ」にしたのは、過去を「負うこと」をしたくなかった　からです。漢字の「負け」は今までの雨に「負け」てしまったのです。　カタナカの「マケ」は過去を含みません。今の境遇、雨（降りかかる自　分が負と思うこと）に「マケ」たに過ぎません。つまり今ある自分の「自　省」であって過去全ての自省ではないのです。

◇授業の感想

・ただ単に宮沢さんのマネをして反対のことを書いてあるだけだと思っていましたが、授業を通してとても深い意味のあるものだなと思いました。
・「雨ニモマケズ」は知っていたけれど、「雨ニマケ」は知らなかったからおもしろかった。最初はすごく自分がイヤという話しかと思ったけれど、今の自分を否定しているだけとわかってすごいと思いました。
・現在の自分がダメだなということで書いた。人生全部が負けていないので、カタカナにしたそうです。こういうことに気づく人はすごいなぁ、　と思いました。自分を認めている。
・自分の人生がイヤなんじゃなくて、今の自分がダメだからその詩を書いたんだと思う。
・最初はパクリだと思ったけれど、深く考えたら、とてもすごい詩だなと思った。
・自分の弱いところをちゃんと認めて詩にしたことがすごいと思いました。宮沢さんも剣崎さんも二人とも見習いたいと思います。
・剣崎さんは宮沢さんのことをすごい尊敬しているんだなと思いました。　「雨ニマケ」の詩はすごく、自分に負けちゃダメだということが伝わりました。
・剣崎さんは自分の弱さを認めて宮沢さんみたいな人になりたい、と自分のことを考えて自分で自分と人を比べることができるのはすごいと思いました。
・何か自分もそういう弱いところがあるかも、と思います。でも剣崎さんは自分の悪いところを詩にして改めようとする心はりっぱだと思いました。
・剣崎さんは自分のことを詩にしていて反省しているように思えたからいいなぁ、と思いました。

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