シリウス/ 国語 / 社会 / 算数 / 理科 / 生活 / 音楽 / 図工 / 体育 / 道徳 / 学活 / 特活 / 総合

海に眠る未来１

三色ボールペンで読む説明文

森竹高裕

暗誦・朗誦の復活を説いた「声に出してみたい日本語」（草思社）で国民的支持を受けた齋藤孝先生（静岡市出身、明治大学助教授）が「三色ボールペンで読む日本語」（角川書店）という本を書いている。この三色ボールペンを使った授業を実践した。授業後の子どもたちの感想を読むと、かなりの手応えがあった。

授業後、子どもたちの感想

• 気持ちは口ではなかなか表現できないけど、三色ボールペンをやって、線一本で気持ちが表せたな、と思いました。大事なところを、友達から　聞いて書くんじゃなくて、自分で書くことの勉強なんだ、と思いました（Ｎ．Ｔ）
• やっていたら何か楽しくなって、文の中から答えが分かるようでした。たった三色のボールペンで分かるってすごいと思いました。これをつくった人はすごいと思いました。
• 三色ボールペンはすごくわかりやすい。緑は面白いところ、青はまあ大事なところという意味があって、線を引くとどれがどれということがすごくわかりやすい。
• 自分で考えて決めたり、自分の面白いと思ったところが教科書に正直にかけた。今までは意見を言ったりして、自分が思っていることをそのままに言えなかったけれど、三色ボールペンでやると自分の思うところが自分で決められるのでまたやりたいです。
• 面白かった。［まあ大事］とか［すごく大事］とか見つけるのは大変だった。［まあ大事］と［すごく大事］と見分けがつかなくなったりした。赤線の［すごく大事］は一本しかひけないから、すごく考えてやった。緑は面白い所に行くから、みんなと見せ合いをしたりした。教科書がすごくなった。
• 三色ボールペンを使って授業をするとわかりやすくなりました。赤色を使うときはいろいろ迷うこともありました。しかも三色ボールペンはペンが１本にまとまっているからとても使いやすいです。
• 三色ボールペンを使った授業をやって授業がとても面白かった。大事な部分はどこか、そういうところが面白かった。

三色ボールペンのよさ
三色ボールペンを使った読書法とは、どんな方法のであろうか。そのやり方は極めてシンプルである。シンプルなだけに応用範囲も広い。この三色ボールペン読書法には、次のよさがある。

◇読むこと＝考えること：線を引くことで本を読むようになる。
◇集中して読む：線を引くことで、読む（考える）構えになる。
◇要約力：大事な所に線を引くことが、要約力を向上する。
◇コメント力：その文章の要旨を正確にとらえることができれば、よいコメントをすることができる。
◇読み手の個性が現れる：緑線をどこに引いたかを人に聞くは楽しいし、自分で引いていても楽しい。こだわりや癖が肯定され“みんな違ってみんないい”

特に要旨を正しくとらえたい説明文には、合っているのではないかと考え、三色ボールペン読書法を試してみた。

学習の進めかた
　１．意味段落のまとまりを作る。
　２．それぞれの意味段落ごと三色ボールペンで線を引く
　　(1) 青線（まあ大事）を何本でもいいから引く
　　(2) 赤線（とても大事）を１本。もちろん青線と重なってもよい
　　(3) 緑線（面白いところ）を何本でもいいから引く。
　３．赤線を引いたところを黒板に書き出す。
　４．いくつかの赤線の中で、どれが一番大切かを検討する。
　５．緑線をどこに引いたか、お互いに見せ合う。

授業記録
「海にねむる未来」を何度も声に出して読ませ、読みが十分できるようになってから子どもたちに意味段落のまとまりを考えさせた。

「海にねむる未来」には３人の博士が出てきます。どの博士がどこからどの段落になりますか？　　

こう問うことで、説明文を５つの意味段落に分けることができた。迷ったのは、10段落がどちらの博士に入るかということだった。
　　１〜２段落　課題提示
　　３〜５段落　ザフロフ博士
　　６〜９段落　ポンポーニ博士
　　10〜12段落　バング博士
　　13〜14段落　まとめ

それぞれの博士の意味段落について、三色ボールペンで線を引き、赤線の［すごく大事］はどの一文かを検討していった。ここでは、13〜14段落　まとめの段落についての記録である。

まとめの段落を読んで、青線［まあ大事］を引きなさい。青線が引けたら、赤線［すごく大事］を１本だけ引きなさい。

赤線が引けた子から、教科書を持ってこさせる。黒板に赤線の一文を書くように指示する。黒板と同じ意見だった者や、板書が終わったら、緑線を引かせて待たせる。赤線として出されたのは次の４つであった。

Ａ．かれらが研究している生物は、サメや海綿、カブトガニばかりではない。
Ｂ．それぞれが「生きるためのちえ」をもっているにちがいない。
Ｃ．そのちえの一つ一つが、しょう来、わたしたち人類の命を救うことになるかもしれない。
Ｄ．そんなかけがえのない宝が、海の中で眠っているのである。

Ａ〜Ｄのなかで、一番大事な文はどれだろう？

〈Ｂ〉

• クラゲやウニ、イカやヒトデなどから、いろいろな薬ができているのを知らせたかったから。
• 他の生物から、人間の薬を作っていること知らせたかった。

〈Ｃ〉

• 将来の私たちの未来のことが書いてあるし、命を救うことが書いてあるから大切。
• 生き物の知恵のことだから、人間の役に立っている。

〈Ｄ〉

• １段落で問いの文が“海にある宝物とはいったいなんだろうか”で宝という言葉がＤにはあるから。

話し合いを進めていくうちに、１段落の問いの文“海にある宝物とはいったいなんだろうか”に対する答えとして一番よいものは、何か？　が検討されていった。その結果〈Ｃ〉が最もよいということになった。

三色ボールペンの使い方

青（客観重要）…「まあ大事」というところに引く。
　自分の主観というよりは、誰が見てもある程度大事であろうというところに気楽な気持ちで引く。多く引きすぎても構わない。後から青の部分を読めば、あらすじや要約になっているという引き方をする。

赤（客観最重要）…客観的に見て「すごく大事」と思ったところに引く。
　自分の独りよがりではなく、誰が見てもここが最重要であろうという筒所に引く。全文を読む余裕がない人にも、その赤線部だけを見せれば文章の主旨が伝わる、という筒所に引く。赤は青とは違って、むやみに多く引くと「限定」の意味が少なくなるので、絞り込むようにする。青の上に重ね引きしても構わない。

緑（主観大切）…自分が勝手に「おもしろい」と感じたところに引く。
　文章の客観的な要約とはまったく無関係に、自分の好みでおもしろいと思ったり引っかかりを感じたところに自由に引く。完全に自分の好みや関心が基準となるので、正解不正解はもちろんない。気楽に引くことができるので、読み進める場合は、緑を軸にして引くのもやりやすい。
　話の本筋ではないがおもしろいところや、他の人が引きそうもないところに引くのがコツ。青、赤と重ね引きしても構わない。論理的に重要かどうかという観点から一度はなれてみると緑がおもしろくなる。論理より感覚優先で引くと、青・赤にはない味が出る。

　　　　　　「三色ボールペンで読む日本語」（角川書店）より引用