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言葉と事実 １

だまし絵コンテスト

森竹高裕

この単元では、同じ事実をあらわしているのに、使われる言葉によって、その印象が違ったものになることを説明している。この学習に先立って、同じ一つの絵でも、受け取る人によっていろいろな受け取り方があることをだまし絵と心理テストで紹介した。
　
まず、図を配って何に見えるか尋ねた。参考図書「イルージョン」

この絵は何に見えますか？

　図：略
　・後ろを向いている女の人
　
最初に声があがったのは、女の人であった。「あっ、でもまだ見えるよ」と気づいた子がいた。よく見ていると、おばあさんにも見えるのである。半数ぐらいの子が「見えない、見えない」と騒いでいたが、そのうちわかったようである。
　
次の同じようなもう一枚の絵を見せた。この絵は見方によって、うさぎに見えたりアヒルに見えたりする。この絵はすぐにわかった子が多かった。
　
２つの絵を見せたあとにかくし絵の説明をした。 　

のように１つの絵の中に２つの絵が隠されているものをかくし絵と言います。

次のようなかくし絵も紹介した。

この絵の中には、何人の人の顔が隠されているでしょうか？

　図：略
　
目を皿のようにして、人の顔を数えている。もう夢中で探し出していた。７人ぐらいが正解なのだが、わずかな模様を人の顔に当てはめ、「12〜13人の顔を探した」と言っている子もいた。
　
このように絵を楽しんだあとに

今からある一人の先生の紹介をします。よく読んで、どちらの先生に教わりたいか考えて下さい。

＜Ａ＞
　ブランク氏は
　マサーチューセッツ工業大学の社会科学部の卒業生である。
　彼は、他の大学で、三学期間心理学を教えた経験があるが、この大学で、講義をするのは初めてである。
　彼は二十六才、経験が豊かで、結婚している。
　彼を知る人は、どちらかというと、温かくて、勤勉で、批判力に優れ、実際的で、決断力があると言っている。

＜Ｂ＞
　ブランク氏は
　マサーチューセッツ工業大学の　社会科学部の卒業生である。
　彼は、他の大学で、三学期間心理学を　教えた経験があるが、この大学で、講義をするのは初めてである。
　彼は二十六才、経験が豊かで、結婚している。
　彼を知る人は、どちらかというと、　冷たくて、勤勉で、批判力に優れ、実際的で、決断力があると言っている。

（ケリーの実験で用いられた教師の略歴） 　

しばらくＡとＢを読ませたあと、どちらの先生に教えてもらいたいか、一斉に言わせた。いっせいのーで「Ａ！」と全員の答えがＡの先生であった。
　
どうして全員一致でＡになったのであろう。文をよく読むと、ＡもＢも大変優秀な先生である。実はＡとＢの違いは、Ａが「温かい」Ｂが「冷たい」という言葉が入っている。その他は全く同じ文である。わずか一言の違いで、これだけ印象が違うものだという実験をした。
　
このように「言葉と事実」の単元では、言葉の使い方によって、人が受ける印象の違いやだまし絵のように、一つの言葉の中にも、いくつもの意味が隠されていることを学習していく。
　
最後に、工夫したかくし絵を描いてみることにした。

自分で工夫して、だまし絵を描こう