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一つの花2003−１

一言で言うとゆみこはどんな子か？

森竹高裕

　「一つの花」は戦争文学教材である。この物語では、戦争中と戦争後の場面を比べて読み戦争を体験した人の思いや願いを考えるのが主なねらいである。物語を一度読み聞かせた後感想を書いた。

指示１　「一つの花」を読んだ感想を書こう。

• 今の時代に生まれてよかったな思った。戦争の頃は今みたく豪華な料理がなくてかわいそうだと思った。いっぱい食べたいのにゆみ子はかわいそうだと思った。
• ゆみ子はわがままでかわいそうな人だと思った。大きくなったゆみ子は「一つだけ」とかは言っていなかった。
• 戦争の頃は食べるものがなくて大変だったなと思いました。ゆみ子は小さいのによく戦争にがんばって耐えられたな。

　ゆみ子がどんな子か考えることで戦争が激しかった厳しい時代背景を感じ取った。

発問１　一言で言うとゆみ子はどんな性格の子だと言えますか。

　圧倒的に多かったのが〈わがまま〉という意見であった。（１１人）その他には〈お腹をすかせている〉〈言えばもらえる〉である。理由として挙げたのは
　・「おじぎり一つだけちょうだい」といって全部食べてしまったから。
　・お父さんのおにぎりを食べちゃったから。

などである。ゆみ子が本当にわがままな子か深めるために

発問２　ゆみ子は本当にわがままな子と言えるのでしょうか。ゆみ子の年がいくつなのか考えてみよう。

〈１歳〉〈２歳〉〈３歳〉の意見が出た。文中から証拠を探していく。

〈２歳〉
　・言葉は２歳くらいで覚えると聞いたことがある。家の弟も２歳くらいだった。
　・“ゆみ子のはっきりおぼえた最初の言葉でした”とあるから２歳位。

　文中には○歳とはっきり書いていないのだが、言葉をはっきり言い始めたとあるので２歳くらいではないかと確認した。
　さて、そこで２歳の子の言う「一つだけちょうだい」がわがままに当たるかどうか、もう一度考えさせた。

発問３　２歳の子どもがお腹をかけて「一つだけちょうだい」というのは、わがままなことでしょうか。

〈わがままではない〉

• ゆみ子はまだ小さくて戦争のときだから仕方がない。
• 仕方ないと思う。食べるものがなくてお母さんが一つだけといっていたのを覚えていたから。
• お米や食べるものがなくて基本的な生活をしていないからわがままというわけではない。

　ゆみ子は「もっともっと」と言っていたのが「一つだけちょうだい」と言うようになったというつぶやきがあった。確かにそうである。このことを取り上げた。

発問４　一番初めは「もっともっと」と言っていたのが「一つだけ」と言わせるように変えたものは何ですか。

〈お母さん〉〈戦争〉の二つの考え出された。理由を尋ねてみる。

〈戦争〉　

• “次々に焼かれて灰になってしまった”とあって爆弾で食べるものがなくなってしまったから。
• お父さんは「みんなおやりよ、お母さん。おにぎりを」と言っていて、戦争がそうさせたと思う。
• 食べ物がなかったから、ゆみ子は「もっともっと」とほしがった。
• 戦争があったからあまり食べるものがなくて「一つだけ」と言うようになった。

〈お母さん〉

• お母さんは食べ物がないから「一つだけ」と言っていて、それが口癖になってゆみ子も言うようになった。

　話し合いは初め、〈お母さん〉派が優勢だった。ゆみ子はお母さんがいたから「一つだけ」と言ったという理由である。このことをもう少し深く考えさせたかったので

指示１　三の場面をよく読んでみよう。ここをよく読んで考えると証拠がわかります。

〈戦争〉６→０→１６人

• 戦争が終わって町のほうにいけば買い物ができるようになった。戦争の頃は食べ物がなくてお母さんは仕方なしに言っていたから戦争が言わせた。
• ゆみ子はお父さんの顔を覚えていなくて、「一つだけちょうだい」の口癖も覚えていない。だから「どっちがいい」とゆみ子は言っているし、お母さんも「一つだけ」と言っていない。「一つだけ」と言っていたのは戦争のせいで食べるものがなかったから。
• お母さんは「一つだけ」というケチな性格ではなくて、仕方なく「一つだけ」と言っていた。だから戦争がゆみ子に言わせた。