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いのちが一番大切だと思っていたころ

　

森竹高裕

星野富弘さんの生き方を通して、自分の障害について考えさせるとともに、生きていく上に何が一番大切であるのかを考えさせた。

最初に、星野富弘さんがどんな人なのかを尋ねた。

星野富弘さんは、「花の詩画集」などを出している画家です。（ここで、実際に作品を見せる） 富宏さんには、うまく体を動かせないところがあるのですが、どこがうまく動かせないと思いますか

・これだけじょうずな絵を書くんだから、足じゃないの
・車いすにのっている人だと思う
・耳が聞こえない人

美しく描かれた作品を見た後だけに、富弘さんが首から上しか動かないことには気がつかない。

富弘さんは首から下が全く動かないのです。中学校の体育の先生だったころ、模範演技で着地に失敗してマットで首を打ってしまいました。それ以来、首から下が動かなくなってしまったのです。

「エー？じゃあ、この絵はどこで描いたの」という声があがった。すると富弘さんを知っている別の子が「口を使って書いたんだよ」といった。
そこで、「愛、深き淵より」（立風書房）を読み聞かせた。

　私は今まで死にたいと思ったことが何度もあった。けがをした当時はなんとしても助かりたいと思ったのに、人工呼吸がとれ、助かる見込みがでてきたら、今度は死にたいと思うようになってしまった。
　動くことができず、ただ上を向いているだけで、口から食べ物を入れてもらい、尻から出すだけの、それも自分の力で出すことすらできない、つまった土管みたいな人間が、果たして生きていてよいのか。
　下をかみ切ったら死ぬかもしれないと考えたりした。食事を食べないで餓死しようともした。が、はらがへって死にそうだった。
　死にようになると生きたいと思った。母に首をしめてもらおうとも思ったが、母を殺人犯にさせるわけにはいかなかった。

富弘さんは、このころどんな気持ちだったのでしょう。文章の中の言葉から見つけてみましょう

子供の発表をもとに、次のようにまとめた。

マットで首を打って動けなくなってしまった。
↓

なんとしても助かりたいと思った。
↓
今度は死にたいと思うようになった。
動くことができず、ただ上を向いて寝ているだけ
口から食べ物を入れてもらう
自分の力で（しりから）出すことができない
つまった土管みたいな人間

「死にたい」と思っていたころの富弘さんにみなさんは賛成ですか　反対ですか？

全員の子供が反対した。最初は、表面的な命の大切さについて話していた子供たちが、次第に自分の障害と重ね合わせながら話をしていった。私は、子供の話すに任せて、じっと耳を傾けた。今、子供たちは初めて自分の障害について語り始めたのだ。

命が
いちばんだと思っていたころ
生きるのが苦しかった
いのちより
大切なものが
あると知った日
生きているのが
嬉しかった
　富弘

あんなに死にたがっていた富弘さんが、「命より大切なもの」を見つけて、生きるのが嬉しくなりました。「命より大切なもの」って何だと思いますか

子供たちの発言は、お金や物ではなく生きていく上での心の持ちかたをあげたものが多かった。

富弘さんは、「命より大切なもの」はなんだと思っているのでしょうね。花の詩画集の本を見て、どの詩が「命より大切なもの」かをさがして、その理由も書いて下さい。

再び、「命より大切なもの」という視点から、花の詩画集を読ませた。子供たちの感じた「命より大切なもの」は次のようなものだった。

つばき

　　木は　自分で
　　動き回ることができない
　　神様に与えられたその場所で
　　精一杯枝を張り
　　許された高さまで
　　一生懸命伸びようとしている
　　そんな木を
　　私は　友達のように思っている

ほしのさんは木とともだち。人にはなかなかできない。
ほしのさんはまたあたらしいともだちをつくってなかよくなる。
　そんな時のほしのさんは、命なんかをわすれて植物とふれあう。
　私もほしのさんのやさしい心がほしい。
　ほしのさんも私と同じでからだが不自由だけど、私にはそう思えない
ほしのさんの命よりも大切な心はふれあいの心だと思います。

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