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思春期へのメッセージ７

　 〜卵子と精子がヒトになるとき（受精）〜

森竹高裕

受精についての学習をした。授業の中で大切にしたかったことは、受精の知識のことではない。一番大切にしたいのは、この世の中に自分が生まれてきたことの不思議さや奇跡的な確率の中から生まれてきた自分の命を大切にしようとする気持ちである。

今ここに自分が生きているのを当たり前のように考えてしまうが、実は何億もの精子の中からたった一つの精子だけが卵子と受精することができ、もしほんの少し精子が違っていたら、それはもう自分ではないこと。受精することがいかに大変なことかを知り、また自分たち一人ひとりはその大変なところをみな通り抜けてきたのであることを知ることで、自分の命は粗末なものではなく価値のあるすばらしいものであることに気づいてほしいと願った。

授業ではまず卵子と精子について説明をした。

卵子の大きさってどのくらいだと思いますか

　・にわとりの卵くらいかな？
　・違うよ、もっと大きいんじゃないの

子どもたちはだいたい鶏の卵くらいの大きさを想像した。鶏でさえあの大きさであるから、人間だって鶏の卵くらいの大きさがあっても不思議ではない。そこで「正解はこのぐらいです」と黒の画用紙を配った。子どもたちはどこに大きさが描かれているかと思って、画用紙をあちこちと捜すが、どこにも描かれていない。「どこ？どこ？」と見回している。「よーく見てごらん。針で開けた小さな穴が開いているでしょう。それが卵子の大きさです」と説明を聞くと「へーっ」とみな驚いていた。

そのほか卵子について、絵などの使いながら詳しく説明を聞いた。

人の卵は卵子といいます。その卵子の大きさは、そんなに小さなものなんです。一回の月経のときに、１個だけ女の人の卵巣から出てきます。赤ちゃんの宮殿（膣）でベットを作り、精子を待っています。

（絵：卵子や精子の図）

一回の射精で精子は何個ぐらいあると思いますか

　・１０個
　・１００個

といった予想だった。そこで、「３」と板書して、１つずつ「０」を書き足していった。３０００でも３００００でも「０」は止まらない。１回「０」を書くごとに「へー！」という声が大きくなっていった。約３００００００００個の精子が射精することを告げると、またまたびっくりしていた。そのほか大きさなどについて絵を使いながら詳しく話をした。

男の人のペニスからは、精子が出されます。精子は一回で３億個ぐらい出るといわれています。精子はおたまじゃくしのような形をしていて、尾を振りながら自分で進むことができるんですよ。

次はいよいよ受精である。

一つの卵子はいくつの精子と受精できると思いますか？

３億の話にびっくりしているので、予想は大きな数になった。
　・２億　　　　　・２万
　・５千　　　　　・１億

しかし卵子と受精できるのはたった１つだけの精子であることを教えるとまたまたびっくりした。そして「驚異の小宇宙人体」（ＮＨＫ）を使い、この写真のように一つ一つの精子は、個性を持っていること、たった一つの精子が違っただけで、それはもう自分ではなく別の誰かになってしまっていたこと、３億の精子の代表が自分であることを話した。

みんなで感想を話し合ったあとに、自分へ手紙を書いた。自分の命は当たり前にあるのではなく、他のものにはかえられないかけがえのないものであることを感じることができた。

（自分自身への手紙）