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エイズについて知ろう

森竹高裕

エイズについて基本的な理解をすること、エイズ患者への偏見について考える授業をおこなった。まず最初に次のように尋ねた。

ＡＩＤＳは、何と読むでしょう？このことについて何か知っていることがあったら教えて下さい。　

ＡＩＤＳの読み方は、エイズと読むことを教えた。子どもたちから出たエイズについては、次が出てきた。

　・病気　　　　　・一度かかると直らない　・人に移る（ウィルス）
　・薬がない　　　・死んでしまう　　　　　・寿命が縮む
　・病気に二度なる

　ある程度出てきたところで、教師がごく簡単にエイズについて説明した。

エイズとは白血球がダメになってしまう病気です。白血球とは人の体をばい菌やウィルスから守る働きをします。このエイズウィルスは、人を守る白血球をやっつけてしまうのです。だからエイズになった人は風邪を引いたりすると体を治せずに死んでしまうのです。このエイズは人から人へ移っていきます。

このように説明したあとに、感染者に対してどんな考えを持っているかを尋ねた。

今から10の質問をします。○×で答え、いくつの○があったか教えて下さい。

質問内容は、（資料１）の通りである。○の数を尋ねていくと、５〜６個の○をつけた子が最も多かった。１人だけが１個であった。この子どもに
どこに○をつけたのかを聞いてみた。

　・３の「一緒に遊ぶ」です。感染者の子と、分け隔てなく一緒に遊べればいいと多う。

他の子はどうかと聞いてみると、本音に近い話が聞けた。
　・エイズが移ったら怖い
　・移ると困る
　・かわいそうだとは思うけれど、近づけない。

子どもたちはエイズに移ることを怖がっているようなので、また10の質問をした。

どんなときにエイズは移ると思いますか。１０の質問をしますから、チェックして下さい。

質問内容は（資料２）の通りである。最も少ないのは１個、５〜６個に○がついた子が一番多かった。「正解はこの中に一つもありません」と言うと「エー！」というびっくりした声が返ってきた。「じゃあ、どんな時に移るの？」と尋ねてきたので、感染経路について説明をした。

ここに書いてあるような日常生活でエイズが移ることはありません。エイズが移るのは次の３つです。Ａ：母子感染　Ｂ：麻薬　Ｃ：性液による感染、簡単に言うとセックスです。以前は輸血によるミスでエイズに感染したことがありますが、現在ではありません。　

子どもたちは真剣な表情で話を聞いていた。性液による感染も騒ぐことなく熱心に聞いていた。

もしこのクラスにエイズに感染している子が来たら、みんなはどうしたいですか。

　・普通の暮らしをすればいい
　・一緒に遊んでも別に大丈夫
　・かわいそうだと思う

「エイズのことが詳しくわかる前に苦労した子がいます。いじめられたり、街中で学校に入ることを反対されました」こう話してからビデオを視聴した。「ジョナサン君といっしょに」（東京書籍）18000円。ビデオには、ジョナサン君がクラスの友達といっしょに普通の生活をしている様子が映し出されていた。

先ほどエイズには薬がないと言いましたが、実は一つだけ薬があるのです。それはみんな誰でも持っている薬なのです。それは何だと思いますか。

　・副作用のある薬
　・心
　・やさしさ
　
「やさしさってどんな心ですか？」と教師が尋ねると「やさしい心」という答えが返ってきた。

エイズ患者にとって一番よく効く薬は「愛」です。みんなと一緒にすること、わけへだてなくつきあうこと、これが何よりも効果があるそうです。エイズの薬は「愛」なんですね。

こうまとめて授業を終えた。

（資料１）

　　　　　　「感染者に対してどんな考えを持っていますか」

現在あなたは感染者に対してどんな気持ちを持っていますか。次の中から選んで○をつけて下さい。

１（　　）感染者とわかれば、近づかない。
２（　　）感染者とわかれば、それとなく会わないようにする
３（　　）感染者も他の人もわけへだてなく学習したり遊んだりする。
４（　　）感染者とわかれば、何かと元気づけたり励ましたりする。
５（　　）感染者が自分のからだにふれたときには、すぐにそこを洗う。
６（　　）感染者とは顔を近づけて話さないようにする
７（　　）感染者とは友達になることはできない
８（　　）感染者と会ってみなければわからない
９（　　）感染者とわかれば、他の人にも感染者であることを知らせる
10（　　）感染者とわかっても、そのことを他の人に知らせる必要はない

（資料２）

　　　　　　「エイズを正しく理解していますか」

エイズウィルスが体の中にいる人を感染者と言います。次の場合移らないと思うものには○、移ると思うものには×、よくわからないものには△をつけて下さい。

１（　　）感染者と一緒に入浴した
２（　　）感染者と一緒に食事をして、同じ皿のものを食べた
３（　　）感染者の学用品を借りて使用した
４（　　）感染者とプールで一緒に泳いだ
５（　　）感染者と一緒に手をつないでフォークダンスを踊った
６（　　）トイレのとき、感染者の使用した洋式トイレの便座に腰かけた
７（　　）感染者が自分の前でせきやくしゃみをした
８（　　）感染者を刺した蚊に刺された
９（　　）感染者の飼い猫に引っかかれて出血した
10（　　）感染者が使ったコップで水を飲んだ

（資料３）

新聞記事より「偏見・病魔と闘った少年」（1990年４月６日朝日新聞）

　少年の名前はライアン・ホワイト君（18才）。インディアナ州ココモの町にあるウエスタン中学に通っていた13才当時、血友病の治療で注射した血液製剤でエイズにかかった。感染を恐れる父母らの圧力で、学校当局と教育委員会は、ライアン君の登校を禁止した。そして、半年間は、自宅の電話で授業を受けるという異常な事態が続いた。その後、地域の主任医療担当官が、「登校しても他の生徒には影響しない」との裁定を下したが、登校当日になると半分近い生徒が学校を欠席した。さらに、父母らが登校禁止の仮処分を求める訴えを起こす騒ぎになった。裁判には勝ったが、ライアン君一家は根強い偏見を避けるために別の町に引っ越すことになった。
　この事件は、ある俳優がエイズでなくなり、エイズが一種のパニックを引き起こしたときに起きたため、エイズにかかった人の人権や病気への偏見や差別をめぐって深刻な問題を提起した。しかし、引っ越し先の高校はその後、生徒にエイズに関する教育を施した上でライアン君を積極的に受け入れ、ライアンくんもエイズの治療薬ＡＺＴの投薬を受けながら勉強や学校の活動に打ち込み、エイズにかかった人と地域の人々とが共に生きた実例になった。


参考資料「みんなで生きるために−エイズ教育参考資料−」（財団法人日本学校保健会）