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　TKの弟　

森竹高裕


　雑誌「ＡＥＲＡ」（朝日新聞）2003年１２月２９日に興味深い記事が出た。人気男性アイドルグループ・TKの実弟ＳK氏の記事である。その記事を使って授業をした。

　会ってみたい有名人がいますか。

　・ジダン　　・中村俊輔　　・中田英寿
などサッカー選手に集中した。その他の子は「まだいない」との返事。

もし有名人が兄弟や家族だったら嬉しいですか。その人と何をしたいですか？

　全員が〈嬉しい〉であった。それはそうだろう。したいことは
　　・サッカーを教えてもらい、
　　・いっしょに遊びたい。
　　・ゲームをしたい。

　ここで１枚の写真を見せて「この人は誰でしょう」と尋ねた。ヒントを少しずつ出しながらTKの弟・Ｓさんであることを知らせると「えぇー！」「ありえねぇ」の声。子どもたちはずいぶんビックリしていた。

TKの弟でＳさんはうれしかったと思いますか。

〈嬉しかった〉７人　〈普通〉５人　〈嬉しくない〉１人

　半数が〈うれしかった〉に手をあげた。しかしＳさんは嬉しくなかったのである。それどころか“死んじゃおう”と思うほど弟であることやイヤだった。このことについてもう少し深く考えてみることにした。

Ｓさんは嬉しくありませんでした。なぜだと思いますか。

　　・お兄ちゃんがうらやましい。自分のことをＴＶとかで全然紹介してくれなかったから。お兄ちゃんが人気グループになったから。
　　・歌が嫌いだから。
　　・意地悪だから。
　　・お兄さんは芸能人だから。
　　・テレビによく出ているから。
　　・お兄ちゃんがうらやましい。有名で自分は何もしてないから。

　どちらかというと妬みや恨みという感じである。そこでこのＳさんのエピソードを紹介した。

ＳＫ氏のエピソード

・小学生の時、友達といっしょに遊んでいても「今日はお兄ちゃんどこにいるの」と遊びを中断されたこと。
・地元の高校に受験に行ったら、知らない高校生に「生意気だ」と待ち伏せされていたので、その学校の受験はやめた。
・二次募集で本物のアイドルが数多くいる堀越高校なら特別扱いされないと入学する。
・週刊誌に「TK弟に追っかけギャル出現」と会ったことのない女性タレントとの交際を書かれる。
・部活のアメフトの試合では相手チームに目の敵にされ合法的に袋叩きされる。
・大学で彼女ができたが、その目当ては兄に近づくことだったこと。

　話を聞かせたあと

Ｓさんがなぜ“死んじゃおう”と思ったかわかってあげられる？　

　・何もしていないのに追いかけられたり、イヤなことをされた。
　・いじめられた。
　・自分は何もしていないのに嫌なことだ。

　Ｓさんはいつもお兄さんのTKと比べられたこと、自分を自分と見てもらえなかったことが嫌で「オレはＳKなのに」とつぶやいたことを押さえた。

　あなたは、誰かとが比べれたりしたことはありませんでしたか。その時うれしかったですか。

　１０人が〈ある〉であった。〈ある〉と答えたが全員が〈嬉しくない〉と答えた。どんなことなのか話を聞いてみた。

　　・お兄さんやお姉さんのことばかり比べられると悲しくなる。
　　・比べでも何の意味にもならないから。
　　・自分は自分だから比べられるのはいやだ。
　　・比べられるといい気持ちがしないしイヤだから。
　　・サッカーがうまくないと言われた。

　子どもは幼い表現ではあるが、自分は自分なのだからそれを認めてほしい、と言っているようだった。

あなたにとって自分だけのもの、自分が大切にしていきたいものは何ですか。

　３年生の子にとって、この質問は少し難しかったようだ。自分を自分らしくしてくれるものを考えた。
　　・勉強や家族や心を大切にしたい。
　　・自分のことばを大切にしたい。

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