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手品師
〜夢をかなえるか、約束を守るべきか〜
森竹高裕
約束を守ることと自分の夢をかなえることのジレンマについて考える授業をした。資料は「手品師」を使った。ただし、最後まで提示はせずに、手品師が迷うところまで(前半部)、印刷配布した。
配った資料を読み聞かせ、話の続きをもっと聞きたそうにしていたが、この先を一緒に考えることにした。
手品師はこのあと、どうするべきだと思いますか (少年との約束を守る・大劇場へ行く)
・少年を大劇場へ連れていけばいいよ
すぐにこんな意見が出されたが、少年の家がわからないこと、今夜すぐに出発しなければ明日のショーに間に合わないことを説明し、選択肢は(大劇場に行く・約束を守る)のどちらかしかないことを確認した。自分だったらどちらを選ぶかという視点で考えさせた。
< 大劇場へ行く > 5人
- この劇場に行って、有名になって、大金持ちになる可能性がある。
- このチャンスは二度とないかもしれない。手品師にとっては夢がかなう。今だってお金に困っているから、ぼくだったら大劇場へ行く。
- パンもやっと買えるくらいお金に困っている。劇場に行けばお金ももらえるし二度とないチャンスだから。
- 一日のパンも買うのも困っている。劇場へ行って男の子に次の日「ごめんね」と言えばいい。
- 約束を破るのは悪いかも知れないけれどチャンスだし、男の子が明日来るところへ夜のうちいって、手紙を置けばいい。
< 少年との約束を守る > 27人
- 大きなステージに立つというチャンスはまた来るかもしれない。
- 約束をしたら破るわけにはいかない。少年が淋しく思う。
- 少年は手品師と約束して感激している。お父さんもお母さんもいない。でも手品を見ることを楽しみにしている。手品師が来ないとよけい悲しむ。悲しんだ顔は見たくない。
- 「きっと、きっとだよ」って男の子が言っているから、約束を破るわけにはいかない。
- お父さんが死んでしまって、男の子は一人で待っている。約束は守った方がいい。
- 約束は守った方がいい。ステージに立つ約束はまだしたわけではない。男の子の前でやるところから始まって、だんだん公園とかやるところを広くしてけばいい。チャンスは一回ではない。
まだまだたくさんの意見が出された。意見が出尽くしたところで、話の続き(後半部)を読み聞かせた。みなシーンとなって、耳をそばだてている。手品師は結局、男の子との約束を守ったのであった。
さてこの手品師のとった行動について賛成か、反対か考えを書かせた。
手品師のしたことに賛成ですか?反対ですか?道徳の証拠は、自分の体験です。自分のことを証拠にしながら考えを書いて下さい。
< 賛成 > 29人
- 友達に私が持ってきてほしいものを持ってきてと言ってもずっと持ってきてくれなかったことがある。
- 約束をして破られると、とても嫌な気持ちになるから。
- 少年はかわいそうだし、約束もしっかりしたからです。それなのに少年を裏切るのはあまりにもかわいそう。
- ぼくは昔友達に裏切られれたことがあるので、裏切られると辛いから。
- ぼくも過去に困っている人に自分の一つしかない本をあげました。だからこの手品師の気持ちが分かります。
< 反対 > 3人
- ぼくは夢の方が大事だからです。いくら友人が行ってもぼくは夢の方へ行きます。将来が大事。
- 友達と遊ぼうって言われてうんって言ったけど、その日大事な用ができてどうしても遊べなかったことがある。
自分の経験をもとに考えを書いている子が多かった。全体の意見としてどちらが正しいかということは決めずに、オープンエンドで授業を終わった。
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