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「大きな木」シェル・シルヴァスタイン（篠崎書林）という絵本がある。「むかし りんごの 木があって… かわいい ちびっこと なかよし」で始まるこの絵本は、１本のりんごの木が一人の人間に限りない愛を捧げる美しく余韻の残るお話である。
子どもたちには、まず初めにこう尋ねた。
・ＲくんやＴくんとサッカーやゲームをして遊んだ。
・Ｎちゃんとゲームをして遊んだ。
・Ｙちゃん家でゲームやマンガで遊んだ。猫が来たもんで逃げ回った
何人かに放課後の様子を話してもらったあと「木と毎日遊んでいた友達のお話を聞いてみましょう」と「大きな木」の読み聞かせをした。子どもたちを黒板の前に集め１ページずつ読んでいく。前半は、坊やと木の楽しいひとときが続く。子どもたちもニコニコしながら聞いている。
やがて坊やにはガールフレンドができる。彼女にプレゼントを送りたい坊やのために、木は自分のリンゴの実を全部与える。″木はそれで嬉しかった″
・リンゴがお金になったから。
壮年になった坊やが久しぶりにやって来る。″家がほしい″という彼のために木は自分の枝を全部与える。でも、″木はうれしかった″「かわいそう」というつぶやきも聞こえてきた。
・坊やを幸せにしてあげたいから
・（坊やとの）思い出があるから。
・幸せになってほしいから。
また何年もが過ぎ、中年になった坊やが来る。彼は ″どこか遠くに行ってしまいたい″というので、木は自分の幹を差し出す。彼は、幹を切り倒し、船を作り、どこかへ行ってしまう。ここまで読んだところでみんなで考えることにした。
子どもたちは < 嬉しかった > 23人、 < 嬉しくなかった > ４人と考えが分かれた。
< 嬉しくなかった > ４人
・坊やはもう遊んでくれないし、枝と幹も取られてしまったから。
・普通の木みたいになっていないから。
・もしぼくが手を切られたら、痛くて嬉しくない。
< 嬉しかった > 23人
・子どもの時に遊んでくれた。だからその分をあげた。
・木も生きているから。いつか死ぬから仕方がない。
・嬉しかった。坊やを幸せにしてあげたい。
・子どもの時に遊んでくれたから。
子どもの時に遊んでくれたからが、 <嬉しかった>派 には多く見られた。そこで、絵本の続きを読み聞かせた。絵本は、″きはそれでうれしかった… だけど、それはほんとかな″と結んであった。Ｔ君も思わず「本当かなぁ？」というつぶやきを発した。すると
・おじいさん（＝坊や）になって座るものがほしかった。切り株のおかげで役に立ったから嬉しい。
・いろいろなものに使われたから。
・その人の役に立てばいい。楽になればいい。
・切り株だけになっても、おじいさんには役に立った。
・木は恩返しをしてあげたかった。
・大きくなってもおじいさんになっても、木のところに来てくれたから。
さて、ここまで話したところで学校のケナフについて考えてみた。ケナフの畑を見ると花は落ち、葉は枯れ、茎はめくられ、幹は折られている。
< 嬉しかった > 23人、 < 嬉しくなかった > ４人と同じだった。
< 嬉しくなかった > ４人
・食べられたりしてイヤだった。
・もっと育とうとしたのに食べられたから。
・最近はケナフに水を全然あげていないし（体験活動が）終わったら知らんぷりだから。
・皮をむかれたから。もう冬だから寒くなるし、切られたらかわいそう。
< 嬉しかった > 23人
・水も草取りもしたから。ただ伸びているだけでは使われないから。
・水をあげたり草取りをしたから。
・食べたり紙を作ってみんなが楽しんでくれれば、ケナフも喜ぶ。
・クッキーで食べた。一生懸命つくって「おいしいねー」というその言葉が嬉しい。
・いろいろ使ってくれたから嬉しかった。
・何もしなければしおれるけれど、使ってくれたから。
・花が咲いたから
・大事に育ててくれたから。
・大きく育ててくれたから。
・大きな木も ケナフも いっしょぐらい うれしかったと思う。大きな木は ぼうやが のぼってくれたし、ケナフも みんなが たのしんで
くれれば いいってかんじ。
・木や 花のきもちが よーくわかりました。
・ケナフも 木も 人と同じで 生きているんだと わかって、命の大切 さがわかった。
・ケナフが「うれしい」と思ってくれたらいいな。
・大きな木は やさしくて かんどうした。
・木は嬉しいって言ったから、ぼくは嬉しいって書いた。
・大きな木は本当にうれしかったのかなぁ、と思った。
・大きな木のときは、本当は うれしかったのか うれしくなかったのかわからなかったけれど、ケナフが はじまったら、木のことも ちょっとは わかってきた。
・大きな木は やさしすぎ と思った。
・木が うれしかったから よかった。