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「ごんぎつね」の作者新美南吉が「でんでんむしのかなしみ」という作品を残している。読み聞かせ風に授業を進めた。
「でんでんむしってカタツムリのこと？ カタツムリなら知っているよ」という声があがり、
・からがある。
・歩くのが鈍い。
・べとべとしている。
・人参を食べると、オレンジ色のうんちをする。
・塩をかけたら溶けちゃった。
・何も入っていない。
・体が中に入る。
・ふた
ほとんどの子どもが、でんでんむしの殻の中には〈何も入っていない〉と考えた。そこで、でんでんむしのかなしみを途中まで読み聞かせた。
（“すると、おともだちのでんでんむしはいいました。”まで）
ここまで読んだところで、
・そんなことないよ。だって、人生なんだもん。
・そんなことはないよ。楽しいこともいっぱいあったでしょ。
・そんなことあるわけないよ。幸せだから。
・悲しみはみんなあるから大丈夫だよ。
・そんなことないよ。悲しみだけではないよ。
ほとんどの子が〈そんなことないよ〉という返事であった。するとお友達のでんでんむしはこう答える。
“あなたばかりではありません。わたしの背中にもかなしみはいっぱいです。”
「えっ」という声が漏れてきた。
また続きを読み進めた。（“べつのおともだちのところへいきました。”）
・僕も悲しい。
・それは私もよ。それは仕方がない。
・大丈夫だよ。
・大丈夫。これから楽しいことをすればいいよ。
１回目と比べて多様な考えが出された。また続きを読んだ。
（“あなたばかりじゃありません。わたしの背中にもかなしみはいっぱいです。”まで）
「同じじゃん」という声が聞こえてきた。また続きを読んだ。
（“おともだちをじゅんじゅんにたずねました。”まで）
「もうわかった！」という声がいくつもあがった。
・みんなも網羅にいっぱい悲しみがあるよ。
・私の背中にもいっぱい悲しみがはいっているよ。
やはり３回目も１回目、２目目と同じであった。３人のお友達から全く同じ話を聞かされたのである。
・みんなも悲しいんだよ。
・私だけじゃないんだ。
・全員同じなんだ。
・私たちにはみんな悲しみがある。
・僕だけじゃない。
でもでんでんむしはこう語る。
“かなしみは、だれでももっているのだ。わたしばかりではないのだ。わたしはわたしの悲しみをこらえていかなきゃならない。”
でんでん虫は、こうして嘆くことをやめた。