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ぼくの名前よんで（家族愛）

　

森竹高裕

家族愛について考える授業をおこなった。まず始めに、家でどう呼ばれているかを尋ねた。

あなたは家で何と呼ばれていますか？いつも同じ言い方で呼ばれますか？

全員に聞いたのだが、とても楽しかった。< 呼び捨て >　< ○○ちゃん >　< 省略 >　などの呼ばれ方があった。学校では聞いたことのないような呼ばれ方をしている子もあり、笑いが起こった。いつも同じかどうかは、そのときの状況によって違うようである。

　・悪いことをすると、バカシと言われる。（本名はタダシ）
　・機嫌がいいと、○○ちゃんって言う。
　・怒っていると、呼び捨て。
　・お菓子を食べていると、○○ちゃんって近寄ってくる。

楽しい笑いが起きたところで、資料の前半部分（父の会話の前まで）を読んだ。ここまで読むと、「ふーっ」とため息が漏れた。力のある資料は読むだけで、ひしひしとその胸に迫ってくるものがある。次にこう尋ねた。

父は、太郎の名前を呼べないことを申し訳ないと思っているでしょうか？

これには全員が < 申し訳ない > と考えた。

< 申し訳ないと思っている >

ここで本文中の「名前を呼べないんなら、ぼくなんか生まれなければよかったんだよ」について考えてみることにした。

あなたも太郎と同じようなことを言ったことはないですか？　例えば「誰も生んでくれと頼んだわけじゃない」とか言ったことはないですか？

この質問に、３人が < 言ったことがある > という話をしてくれた。
　・私が怒られたときに、「生んでくれと頼んだわけじゃない」と言ったら、お母さんが黙ってしまった。
　・お母さんに「生むんじゃなかった」と言われたもんで、「生んでくれと言ったわけじゃない」と言い返した。

親子でもいろいろあるようである。ここで資料の後半部を読み聞かせた。子どもたちはシーンとなって聴ききっている。父の会話の「耳ガ聞コエナイコトヲハズカシイト思ッテイナイ」という言葉を取り上げた。父は必ずしも申し訳ないと思っているのではないことを確認した。次に、父の話について考えてみることにした。

お父さんは「耳ノ聞コエナイ人間トシテ、最高ノ生キ方ヲシテイコウト約束シテイル」と言っていますが、最高の生き方とはどんな生き方だと思いますか。

　・死にたいとか、生まれない方がよかったとか言わないで生きる。
　・後悔しないように、三人で楽しく過ごす。
　・悪い言葉（死にたい、生まれない方が良かった）と言わない。
　・人生を大切にしろ。生まれただけでありがたい。
　・耳が聞こえなくて不自由かも知れないけれど、太郎を生んで大切にしたい。
　・人間として普通に生きていく。３人で仲よく暮らしていくこと。
　・どんなことがあっても、くじけないで、この生活を楽しく幸せに暮らしていくこと。
　・口でしゃべらなくても、普通の人みたいに生きること。
　・親子で心と心をつなげていくこと。
　・たとえしゃべれない、聞こえない親子でも、子どもにいやな思いをさせない。

　こうしてみていくと、聴覚障害があってもなくても、「最高ノ生キ方」とは、平凡で普通と変わらないことがわかる。

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