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今日、わたしはひさしぶりに、ひろみさんが、としえさんの二人と、学杖からいっしょに帰ることになった。ひろみさんが歯医者によるので、まわリ道になるけどついていってほしいと、わたしたちにたのんだのである。わたしたちはおなかがぺこぺこだったが、三人いっしょに帰ることなどめずらしいので行ってあげることにした。
歯医者では、ひろみさんの順番は四番目だった。少し時間がかかると言われて、わたしととしえさんは外で遊んでいることにした。まもなく、ひろみさんはちりょうを終わって出てさた。
「待ったでしょう。今日で終わりだってさ。今日はちょっとみがいただけ。」
ひろみさんの顔は、歯のちりょうがすっかり終わったからか、晴れ晴れとしていた。わたしたちは達れ立って家へ向かった。おかし屋さんの前まで来ると、ひろみさんが、
「ちょっと、先に行ってて。」
と言ってお店によったと思ったら、なにがか包みを手に持って出てさた。
「あんまん、買ってきちやった。食べない。」
ひろみさんは、わたしたちの目の前で包みを開いた。おいしそうなあんまんが三つ、ならんでいた。わたしのはらの虫がきゆうっと鳴いた。
「どうしたの、これ。」
「今日は、わたしといっしょに遠まわりしてくれたので、食べてもらおうと思ってさ。ねえ、早く食べなよ。」
「だって、まだ学校の帰りでしょう。食べるわけにはいかないよ。ねえ、としえさん。」
私は、周りを気にしながら、だまって見ているとしえさんの意見を聞いた。
「そうよ、ひろみさん。まだ、かばんもあるんだしさ。」
としえさんも、わたしの考えにさんせいだった。ひろみさんは、こまった顔をしているわたしたちを見ると、
「だまっていればわからないよ。だれも見ていないもの。」
と、あんまんをわたしたちにおしつけてさた。
「だれかが急に来るかもよ。」
としえさんは、それでも手を出そうとしなかった。わたしもなんだか心配だった。
「ひろ子さんやっぱりやめよう。」
「だってゆかりさん、せっかく買ったんだもの。それに、もうこれからこんなことしないからさ。」
「平気かなあ。食べながら歩いていると、きっとだれかに見つかってしまうよ」
「だいじょうぶよ。これくらいすぐ食べられるしさ。」
ひろみさんは、わたしたちが取らないので、そのうちの一こをわたしに手わたそうとした。
「でも、学枝の帰りでないときにするよ。ねえ、としえさん。」
「平気よね、としえさん。今ならだれもいないじゃない。ねえ、食べてよ」
「ゆかりさん、どうする。」
「でも、きっと見つかってしまうよ。」
「そうよねえ。」
としえさんは、ゆげの出ているあんまんと、ひろみさんの顔とを見くらべてどうしても決心がつかない様子だったが、しまいにとうとう、
「ゆかりさん。じゃあ、今度だけもらっておこうか。」
と言った。わたしは、としえさんもはらぺこなんだと思った。
「平気かなあ、としえさん。この間だって、学校の帰リに買い食いをして、注意された人がいたじゃない。」
「そうだけどさ。ひろみさんも今日だけだと言っているし。」
としえさんは、ひろみさんに味方をするように言った。
わたしも、としえさんの言うことを聞いているうちに、いつまでもこんなことをしていると、ひろみさんに悪いような気がしてきた。