持久走大会の朝話したこと

「こけちやいました」泥まみれの追走～谷口選手の話　

森竹高裕

今日は二つお願いがあります。準備運動をよくして十分体を温めて走って下さい。走っていて、いつもと調子が違うな、胸が痛いな、気持ち悪いなと思ったら、堂々と歩いて下さい。自分の体を自分で守ることは、恥ずかしいことではありません。

二つ目。調子がよいときの話をします。マラソンの選手で谷口浩美さんという人がいます。お正月の箱根駅伝では、区間新記録を出したり、世界選手権で優勝したことがある選手です。

谷口さんは「苦しみの向こう側に勝利がある。決してあきらめるな」と言いました。誰に勝つのだと思いますか？

バルセロナオリンピックのときです。２０キロ過ぎまでトップを走っていた谷口さんは、給水ポイントで水を取り損ね、そのとき後ろから押されて転んでしまいました。

先頭集団の３０人から３０秒もおくれたのです。優勝は絶望できでした。でも谷口さんは「がんばれるだけがんばろう」と心に決め、８位でゴールしたのです。

この話を聞いて、諦めようとする弱い自分に対して勝つのではないかと思いました。今日は自分の精一杯の力で走って下さい。

1992年8月10日付朝日新聞朝刊　　「こけちやいました・泥まみれの追走」　社会面より

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