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先日、研修会で中坊公平さんの講演を聞く機会がありました。中坊公平さんは、弁護士として森永ヒ素ミルク事件、豊田商事事件などの弁護活動や住専の債権処理に当たってきました。目の前の中坊さんは好々爺然とし、とても親しみやすい感じの方でした。
公平少年は虚弱児として生まれ十分に学校にも行けなかったため、学校の成績もよくありませんでした。ある時、担任の先生が親御さんに向かって「勉強を身につけるよう家でもしっかり見てください」とお願いをしたそうです。それを聞いたお父さんは公平少年にこう説きました。
「公平、お前は金として生まれてきたのではなく、鉄として生まれてきたのだ。金ではなく鉄として生きればよい。勉強を教えたところでしょせん金メッキ。メッキがはがれたときが問題だ。」
この話は大変示唆に富んでいます。自分の天分は何かを見つけ回りに流され右往左往することなくその天分を生きよ、という教えではないかと思います。
一念発起した公平少年。ある時テストで学年一位をとりました。お母さんは「公平さんあんたは天才や」と手放しで喜びました。しかし、次のテストで学年の真ん中辺りに成績が下がり「お母ちゃん、やっぱりダメやった」とがっかりして報告すると「公平さん、中庸は徳のいたすところなりいうてな、すばらしいことや」と言われました。結局のところ、何番であってもいつもほめられて大きくなったのです。「闘う弁護士」として弱いもの立場に立ち続けた中坊さんのこの言葉には重みがあります。鉄としての天分を知り一徹なまでにその道を歩んだから、見栄えのいい金メッキを張らなかったから今があるのだなと感じました。