　ふき子の父

森竹高裕

ふき子は「ただいま」を誰に言ったのか

「ふき子の父」で、ふき子が学校から帰ってきて、「ただいま」という場面がある。本文はこうである。

　「いや、おくさんは、足がすんなり」
父はほっぺたを軽くたたいて、言い直した。おくさんたちが、どっと笑った。白い歯を光らせて父も笑っている。
　その父の目と、ふき子の目があった。ふき子は手をあげた。
　「ただいま。」
　うらの木戸をくぐりぬけ、ふき子は台所にかけ上がったが、買い物にでも出かけたのか、母はるすだった。
　

　文章を一読したあと

指示１　ふき子の「ただいま」を読んで下さい。
　

　全員に「ただいま」を読ませていった。一人が読み終わるたびに、「Ａ」「Ｂ」「Ｃ」と告げていった。声の大きさで分けていったのであるが、大きい声を「Ａ」とした。

　全員が読み終わったところで、こう尋ねた。

発問１　ふき子の「ただいま」は、ＡＢＣのどの読み方がいいですか
　

< Ａ >　ほぼ全員

　・帰ってきたときには、元気よく言った方がいい。

　圧倒的な多数で、大きな声がいいという考えだった。そこで深く読み込ませるために、次のように尋ねた。

発問２　この「ただいま」は、お父さんに言ったものですか。それともお母さんに言ったものですか。
　

　答えは文章中にあるよと告げると、子どもたちは目を皿のようにして、文章を読み始めた。意見は、父・母の両方に分かれた。

< 父 >

　・「ふき子の目があった」と書いてあって、目が合ったのに「ただいま」

　　と言わないと、お父さんもイヤな気持ちになる。

　・「ただいま」のあとに、うらの木戸をくぐり抜けているんだから、まだ

　　そこにはお母さんはいないはず。

< 母 >

　・家の中に向かって「ただいま」と言ったと思う。

　・「ただいま」のあとに「～台所にかけあがった」と書いてある

　< 父 >からたくさんの意見が出され、この「ただいま」はお父さんに言ったらしいという結論になった。そこで、最初の声の大きさＡＢＣを考えさせた。

発問３　　「ただいま」の声の大きさは、Ａでしたね。お父さんの周りに　は、たくさんのお客さんがいます。一度目も合いました。手もあげて挨拶もしています。それでも声の大きさは、大きいのがいいともいますか。　

　こう尋ねると、子どもたちは考え直したようである。

　・あまり大きすぎると、お客さんがびっくりする。

　・お父さんに聞こえればいい位の大きさがいいんじゃないか

という考えが出され、声の大きさは、Ｂくらいの大きさでいいのではと言う結論になった。

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