「キレる」という言葉がはやっています。私はあまり好きではありません。「ムカつく」も同じです。「心のひだ」という言葉があるように、人の気持ちには、微妙な違いがあるはずなのに、気にいらないことは「ムカつく」我慢できないと「キレる」何とも寂しく貧しい気持ちになります。「キレる」も「ムカつく」も「今、ぼく・私は気持ちが不安定なんだ」と言うことを、きっと伝えたいのだと思います。

思春期の心が不安定だということを取り上げれば、それは今に始まったことではありません。私が同じ年代だった頃も不安定でした。第二次成長期を迎え、ホルモンのバランスが不安定で、体が大きく変わろうとしているのです。心が不安定になるのは当たり前です。

心の揺れ幅に個人差がありますが、誰でもみんなこの時期は、人生の中で最大限に心を揺らしています。なぜだかわからないけれど、イライラして、ムカつき、キレてしまうのです。イライラしする一番の原因は、自分が何者なのか、どこへ向かって歩みだそうとしているのか、考え始めたからでしょう。

これまでよりも周りがよく見えるようになりました。親に言われたとおりにしていればよかったものが、自分の頭で判断しなくては行けなくなります。自分は一体何を目指して、何をすればいいのか、自分は回りの人にとってどんな人間なのか。自分で自分がわからなくなってしまったのです。

こんな思春期をどう過ごしたらいいでしょう。２つの処方箋がありそうです。その一つは、心のネットワークを作ることです。自分が友達の役に立っていること、友達が自分のことを待ってくれているという心のネットワーク、また自分は家族の一員であるという家族のネットワークの強さです。自分は誰かのためになっているという自負を持つ子は強いです。

もう一つの処方箋は、自分が進歩したときの快感です。幼い頃と違って、この頃になると意識して努力をしなければ進歩できません。勉強だけに限りません。何か目標を決めて進歩した自分を発見する。これがどれだけ自分を勇気づけることでしょう。